最近、日本ではテレビをはじめ様々なメディアで、インターネット上での誹謗中傷が取り沙汰されています。SNS上で誹謗中傷の集中砲火を浴びた被害者が心身共に追い込まれてしまい、なかには自殺するケースが見受けられます。わずか十数年前までバッシングされる被害者は著名人がほとんどでしたが、インターネットの発展とSNSの登場によって一般人もそのターゲットになりやすくなり、その数は報道されていないだけで相当数に上るでしょう。
そして、子供達の間でもオンライン上での「ネットいじめ」が起きており、深刻な社会問題の一つとなっています。一度、インターネット上に誹謗中傷が書き込まれてしまうと消去するのは難易度が高く、被害に遭った子供は長い間、心の傷に苦しむことになります。ネットいじめはインターネットやSNSが普及したここ十数年で急速に広がったため、多くの親はネットいじめを経験したことがなく、なかなか自分達で具体的な対策を講じることは難しいのが現状です。ネットいじめから子供を守るためにも、今回はネットいじめの特徴をはじめ、対策をご紹介します。
ネットいじめとは?
ネットいじめとは、インターネット上での匿名掲示板などで特定の人物に対して誹謗中傷などを行なう行為のことです。21世紀に入ってからインターネットの普及によって、世界中でネットいじめが起こってしまい、各国で問題となっています。近年はSNSの普及によるものが主流になっています。特に日本ではネットいじめやインターネット上での誹謗中傷による自殺者が多く、深刻な社会問題となっています。
ネットいじめは、主にインターネット上で特定の人物に対する批判や中傷を書き込むことで、被害者へ精神的苦痛を与えるいじめの一種で、一度書き込まれてしまうと消去することが非常に難しく、被害者は長期間精神的な苦痛に苦しむことになります。こういった書き込みをするのは主に友達や同級生、同僚などに対して不満を持っている人の場合が多いです。また、日常のストレス発散や自分の置かれている環境や社会に不満を持っている人も同様に多い傾向があります。
最近のSNS上でのネットいじめは、拡散されやすいのでより被害が拡大する可能性が高いです。特にX(旧Twitter)は拡散性が高いので、特定のアカウントを集中攻撃したり、虚偽の事実が拡散されやすく、面識のない人に対する大規模な誹謗中傷が発生する可能性があります。一見、そんなにたいした事ではないことも、拡散されていくにつれて内容が勝手に変わってしまうなどし、大事になりやすい傾向があります。そして、一度広まってしまうと被害者の家族や友人なども巻き込まれるケースもあり、事態をより深刻化させてしまう傾向があります。
日本国内のネットいじめ事情について
こちらでは、これまでの日本国内のネット上でのいじめの歴史とその傾向について紹介します。
2ちゃんねるや学校裏サイトなど匿名掲示板によるネットいじめ
日本では、2000年代以降の急速なインターネットの普及とともにネットいじめが起きはじめ、特に学生の間で「学校裏サイト」が利用され始めました。学校裏サイトは特定の学校に関する話題を匿名で投稿できる非公式のコミュニティサイトです。仕組みとしては、外部から閲覧するためにパスワードなどの制限がかけられており、オンライン上で検索しても引っかからないなど、閉鎖的なサイトのため、なかなか見つかりにくいのが特徴です。
学校裏サイトは、2002年前後には既に存在していたと言われていますが、2007年に起きた裏サイトに書き込まれた被害者が自殺した事件がメディアに大々的に取り上げられたことをきっかけに公に知られるようになりました。さらに学校を舞台とした人気テレビドラマでも題材としてネットいじめが取り上げられたことで注目され、次々と様々な事件が明らかになっていきました。
また、この学校裏サイトの他にも匿名型のインターネット掲示板である2ちゃんねるなどでも同様の書き込みによるネットいじめが横行しており、これをきっかけに自殺してしまう若者が後を絶たないのが問題となっています。
SNSを利用したネットいじめ
2010年代に入るとスマートフォンを持つ学生が増えたことで、ネットいじめは学校裏サイトからSNSやLINEを使って行なわれるようになりました。SNSは従来の2ちゃんねるや学校裏サイトとは違い、誰でも簡単に書き込めるので学生によるネットいじめだけではなく、大人同士の誹謗中傷なども頻繁に起こるようになりました。特にX(旧Twitter)を使ってのいじめや差別、批判は拡散されやすく、最近では著名人をはじめ、被害者が自殺に追い込まれたケースが後を絶ちません。
ネットいじめの特徴
ネットいじめは通常の物理的ないじめとは異なり、オンライン上で匿名性がある状態で被害者と接するので罪悪感が低く、被害者の反応を直接目にすることもないため、相手が感じている精神的苦痛に気付かないうちにエスカレートしてしまう傾向があります。
また、X(旧Twitter)などで炎上している事象に対して、多くの人が面白半分に加勢してしまう行為自体が一種のエンターテイメント化しているという側面もあります。私達は通勤時間や昼休みなど空いた時間に暇つぶしとしてSNSを見ることがあると思いますが、ついつい炎上しているニュースや投稿に目がいきがちになることはないでしょうか。あまりよくないことではありますが、現代においてSNS上での炎上は一つのエンターテインメントとして認識されているといえます。こういったものに対して、大人はもちろんのこと、オンライン上での情報モラルに関する十分な知識がない学生や子供達は特に影響を受けやすい傾向にあります。
ネットいじめの主な原因
以下では、ネットいじめが起こってしまういくつかの原因を解説します。
急速なインターネットの普及
現在、日本では小中高生のインターネット利用率は9割以上にものぼります。日々の生活で、友達とうまくいっていない、家庭環境に問題があるなど自分の悩みを打ち明けることのできない子供達がインターネット上で書き込んだりし、ネットいじめに発展する傾向があります。
スマートフォンの保持率
日本では中学生の7割以上、高校生にもなるとほとんどの学生がスマートフォンを持っており、このような学生の大多数の使用目的はSNSです。約30年前は人との連絡手段が電話や手紙、直接会うことが主流でした。しかし、このように現在ではLINEやSNSを介して連絡を取り合うことが常態化するようになったのがネットいじめが急速に広まった原因の一つとも言われています。
自分の言葉の影響力に対する自覚がない
多くの子供達は自分の言動が被害者に及ぼす影響を自覚していないため、学校などでもしばしばいじめや事件が起こります。これはオンライン上でも同じで、いたずら心で始めた言動や行動が雪だるま式に膨れ上がってやがて自分達でコントロールできなくなり、ネットいじめへと発展します。
匿名性
SNSやインターネット掲示板などは匿名性を保ちながら使用することができるので、子供達は自分の身元をかくした状態でオンライン上で簡単に攻撃することができます。そして、匿名であることによってよりエスカレートしていきやすいです。
文章は誤解を招きやすい
近年の主流の連絡手段であるメールやLINE、SNSなどインターネットを通したやりとりは基本的に文章で相手とやりとりします。ただし、文章というものはいつの時代でも誤解を招きやすいといえます。受け手が発信者の意図とは異なった捉え方をしてしまうことはよくあり、結果的に相手に不信感を与えてしまい、ネットいじめに発展する可能性があります。
嫉妬・恨み・仕返し
物理的ないじめ同様、ネットいじめでも主な原因となるのは嫉妬や恨み、仕返しです。また、家庭内で虐待を受けていたり、非行に走るような友達が多い子供がネットいじめを行なう傾向があります。
ネットいじめの兆候
もしも、子供がネットいじめに遭っている場合、いくつかの兆候があります。まずは、電話がかかってきた際に必要以上に驚いたり、パソコンをつけることを突然嫌がりだします。これは加害者から連絡が来たり、SNS上での通知が出てくることを恐れている可能性があります。
そして、友達や家族と接することを避け、外出や登校することを嫌がり、場合によっては夜中などに隠れて泣いていることがあります。この場合はネットいじめだけに限らず、物理的にも学校でいじめられている可能性があり、できるだけ人との接触を避けようとします。取り返しのつかない事態にならないためにも、保護者は上記のような少しでも異変がないか常に注意を払う必要があります。
ネットいじめの兆候をいち早く見つけるための対策
これまでネットいじめに関する詳細を紹介してきました。子供の心はとても繊細で、特に思春期の時はそれがより顕著になるでしょう。自分の子供がネットいじめの被害に遭っているかどうか瞬時に気づくのは非常に難しいといえます。しかし、ネットいじめから子供を守るために事前にできることはたくさんあります。以下では、ネットいじめの兆候にいち早く気付き、防ぐための対策を解説します。
子供の変化に注意を払う
保護者は普段から子供に異変が起きてないかどうか気を配り続ける必要があります。もし、いつもと変わった兆候が見受けられた場合は慎重に対応しなくてはなりません。また、兆候によっては、他の様々な要素と相互に関連している可能性もあります。そういったことも念頭におきながら、普段から子供の様子を注意深く見ることが大切です。
普段から子供としっかりと会話することを心がける
保護者は普段から子供と会話することを意識し、子供が親に何でも相談しやすいような環境を整えておくことが重要です。そうすることでネットいじめなど、ちょっとした変化に気づくことができ、最悪の事態を防ぐことに繋がるでしょう。
情報モラル教育とルールを作る
保護者は子供に対してオンライン上での情報モラルについてしっかりと教える責任があります。子供たちがネットいじめの被害者、加害者にならないためにも幼い頃からインターネットを使用する上でのモラルを教えながらルールを作って守らせ、自分自身でリスクを回避する能力を身につけさせましょう。
ネットいじめに関する正しい知識を習得する
子供がインターネット上でのいじめに巻き込まれないためにも、特に10代以下の子供を持つ保護者はネットいじめに関する知識を学ぶ必要があります。そして、ネットいじめの種類や攻撃方法は日々刻々と変わっているので、被害を未然に防ぐためにも常日頃からそれらの情報に対して敏感になるよう心がけましょう。
定期的に子供のSNSをチェックする
ネットいじめは、SNS上で行なわれている場合が多いです。保護者はネットいじめに繋がるような書き込みやコメントがないか子供のSNSアカウントを定期的にチェックするようにしましょう。また、公開範囲に関しても常に気を配るようにしましょう。
まとめ
現在の日本社会において、ネットいじめは深刻な社会問題です。インターネットを利用している人ならば、誰もがネットいじめの被害者、そして加害者にもなりうる可能性があります。特に10代などまだ精神的に発達途上である時期にネットいじめの被害に遭ってしまうと精神的なダメージも大きく、立ち直るのが難しく、一生傷が残ってしまうかもしれません。仮に子供がネットいじめの被害に遭ってしまった場合、被害を最小限に抑える努力をし、細かい部分までケアをするなど、しっかりと子供を守り通しましょう。
保護者は、オフラインだけでなく、オンライン上でも子供を守る責任があることを自覚するべきです。そして、ネットいじめから子供を守り、新たな被害者を生まないためにも、オンライン上で友達や他人をからかったりしないことはもちろんのこと、知らない人とは連絡を取らないこと、炎上やいじめには絶対に反応してはいけないことなどを子供たちに教える必要があります。しかし、あまり過保護になり過ぎてしまうと子供が離れていってしまったり、話を聞いてくれなくなるので注意が必要です。保護者は子供の性格や環境を十分に踏まえた上で、適切に接するように心がけましょう。